(no subject)

君がいないのは耐えられない。





「ねぇ、もう、慣れたでしょ？私に」


彼女と同じ顔をした『誰か』はニッコリと笑う。
笑う姿まで同じだ。
ただ、彼女では、ない。
あの、純粋で、無垢で、綺麗な、彼女とは。



「…やっぱり、君は」



「私は『彼女』だよ？どうしたの？」


その笑顔の向こう側が一瞬見えてしまった。
笑っては居るが笑顔ではない。
楽しそうなのは確かだし、笑ってはいる。
違うのは彼女の中の、狂気か。



「彼女、では、ない、だろ？」


恐る恐る、尋ねた。
彼女の笑顔はまだ崩れない。
むしろ、より笑っているような。



「うふふ、知ってるでしょ？『彼女』は消えたって」



笑みは絶さない。

楽しそうに語る彼女に、恐怖を覚える。
僕は、消えた事実を再び聞かせられるのが苦でならない。
どうにかして、聞かない方法は。
もう、聞きたくない。
『彼女』が消えたのは。『彼女』は、……は。

僕はハッとした。気付いてなかったのだ。
今の今まで。僕は、知らなかったのだ。否、気付きたくなかったし、知りたくもなかった。



「『彼女』の名前は……」



「誰も、知らないよ」



『彼女』の名前を、知らなかったのだ。


彼女に目をやる。

少し寂しそうな顔をしたあと、彼女はまたもとの笑顔になった。

僕は、唖然とした。
消えたんだ。元々なかったんだ。なんで『彼女』のことを。



「『彼女』は、いなかったか……？」



すると、彼女の表情は僕を嘲ているような笑顔になった。馬鹿にしたような。
哀れむような。悲しむような。呆れるような。嘲笑うような。



「『彼女を消したのは貴方だってのにね。』」


彼女と『彼女』の声が重なった。






†††††

後書き。。。
なんか続きで。